2005年01月24日

イギリスの動物実験事情

イギリスは言わずと知れた動物愛護の国ですが、過激な動物愛護活動家が多いことでも有名で、世界中のバイオ系の研究者から恐れられています。

昨年7月には、びっくりするようなニュースがありました。
新薬開発のためにオックスフォード大学が建設中の実験施設が、反対派の妨害活動にあい工事中断。軍隊が出動して警備に当たるという騒ぎになったのです。
BBCニュースによると、当局は、今後、動物愛護活動家に対しテロリストと同様に厳しく対応する方針を示しているとか。

動物実験問題については、ニュースにたびたび登場し、BBCのウェブサイトでもホットトピックとして取り上げられるなど、イギリスでは強い関心を集めています。

筆者は一応ロンドンでも割と大きな医学系の研究所に在籍しているので、イギリスの動物実験施設が様々な点で日本と大きく異なっていることが実感できます。

たとえば、動物実験施設はとある建物の中に内包されており、どこにあるのか部外者からはまったく分からないようになっています。
これはもちろん過激な活動家対策です。
そしてスタッフは動物施設の入り口がどこにあるのかを外部者に口外してはならず、また研究所の中で誰が実際に動物実験に従事しているのかも口外してはならない、という厳しい規則があります。

また、動物に対する扱いが日本に比べるとずっと丁寧であることも確かです。
動物福祉について厳格な規準があり、たとえば麻酔一つにしても、日本で一般的なエーテル麻酔は動物の死亡事故や引火の危険があることを理由に禁じられていて、イソフルレンによる吸入麻酔を行うといった具合です。

実験動物への福祉が重要視されるのはもちろん良いことですが、一方で実験を行うために内務省(Home Office)による審査やライセンス取得など多くの手続きを経なければならず、研究の進行に支障をきたしていることも事実で、なかなかバランスの難しい問題であることを考えさせられます。

ちなみに、筆者の研究所には下の写真のような印象的なポスターが貼ってあります。
これを見ただけでも、いかに動物実験問題がこの国で大きな論争となっているかがお分かりいただけるのではないでしょうか。

動物実験

動物実験の件数はピーク時より大きく減っているものの、遺伝子改変動物の開発などの新たな技術によりその重要性が増していることも確かで、この10年ほどの件数はほぼ横ばいです(BBCニュース)。

今でも世界一厳しい倫理基準がさらに厳格化するような事態になれば、イギリスの医学研究発展の足かせとなるのではないかと心配になります。



posted by fumifumi at 00:00| Comment(10) | TrackBack(0) | ☆英国バイオラボ見聞録! | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
TITLE: アニマルテロリスト
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fumi fumiさん<br />
<br />
<br />
過激な動物愛護活動家は確か『アニマルテロリスト』と呼ばれ、関係者の間からもはかなり非難されています。<br />
<br />
フィンランドにお住まいのパウエルさんも、以前の日記で少し触れていました。<br />
<small> <a href="http://plaza.rakuten.co.jp/moikka/diary/200411260000/" target="_blank">http://plaza.rakuten.co.jp/moikka/diary/200411260000/</a></small> <br />
<br />
<br />
>たとえば麻酔一つにしても、日本で一般的なエーテル麻酔は動物の死亡事故や引火の危険があることを理由に禁じられていて、イソフルレンによる吸入麻酔を行うといった具合です。<br />
↑<br />
エーテル麻酔なのですが、現在はあまり日本でも、その発火性の危険からあまり使用されなくなってしまいました。ただエーテル麻酔は、イソフルレンやセボフルレンよりも、心悸抑制作用が低いので、生理的には最も安全な麻酔薬とされています。<br />
<br />
<br />
>一方で実験を行うために内務省(Home Office)による審査やライセンス取得など多くの手続きを経なければならず<br />
↑<br />
これこれ、先日動物倫理の講義で教わりましたよ。<br />
英国は非常に動物実験関係者にとってはやりにくい国のように思えてなりません。<br />
しかしながら、今傾向はグローバル的に広まっているため、ある意味先手を取ってその対策を学べると考えるようにしています。<br />
<br />
ただ、こうした過激派の方々は、本当に動物実験のことをわかってやっているのか?理解しがたいですね。<br />
<br />
トラックバックいただきます。
Posted by kalunguyeye at 2005年01月31日 07:22
TITLE: Re:イギリスの動物実験事情(01/24)
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(@´〜`@)ー3 フゥ〜 確かに動物実験…しなくていいならして欲しくは無いけれど…<br />
<br />
私の次女 仙台のT北大工学部化学バイオ工学にいるんですが、工学は動物実験なんてありませんよね。<br />
<br />
化学バイオとなるとなんか関係ありそうで…気になります。<br />
<br />
Posted by パンダ7 at 2005年01月31日 16:30
TITLE: 動物実験かぁー・・・
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反対する人達って薬を飲まないのかしら?<br />
私は体が弱いもんで、お薬にお世話になっている身からすると、実験は仕方がないのかなぁと思います。<br />
<br />
ずっと前ね、セントラルロンドンで動物愛護のデモがあったのね。たまたま出くわしてしまった・・・。でもその中にはかばんとか、靴とか、ジャケットとか・・・どう見ても皮製なのよね。それはいいんかい?!って思いました。<br />
<br />
PS.ところでFumifumiさん、Anatomyのあの番組見ましたー?私にはかなり強烈でした・・・。ではでは。
Posted by ぐうたらワイフ at 2005年01月31日 18:13
TITLE: Re:イギリスの動物実験事情(01/24)
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fumifumiさん、お久しぶりです!お帰りなさいませ。<br />
<br />
私も動物は大好きだけど、「過激な」動物愛護活動家は大嫌い。<br />
fumifumiさんの日記中のポスターに同感です。<br />
我が子が病気になって新薬が必要でも、同じように活動続けて、我が子は見捨てて全く関係のない猫や猿の方を本当に助けられるのであれば、ちょっと骨のある奴だと思ってはやるけど、ほんとにそうしたらただの気違いだとも思うなあ。<br />
以前、動物実験施設の爆破事件とかありましたよね。警備員さんか誰か、結果的に殺してましたよね。<br />
家族のある警備員という人間より、動物の命の方が大切なんでしょうね、あの人達にとっては。<br />
こっちって、妙に偏った考えの組織とか、結構多くありません?
Posted by あきゃん1376 at 2005年02月01日 01:07
TITLE: Re:アニマルテロリスト(01/24)
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kalunguyeyeさんこんにちは。<br />
<br />
>fumi fumiさん<br />
><br />
><br />
>過激な動物愛護活動家は確か『アニマルテロリスト』と呼ばれ、関係者の間からもはかなり非難されています。<br />
><br />
>フィンランドにお住まいのパウエルさんも、以前の日記で少し触れていました。<br />
> <small> <a href="http://plaza.rakuten.co.jp/moikka/diary/200411260000/" target="_blank">http://plaza.rakuten.co.jp/moikka/diary/200411260000/</a></small> <br />
><br />
><br />
>>たとえば麻酔一つにしても、日本で一般的なエーテル麻酔は動物の死亡事故や引火の危険があることを理由に禁じられていて、イソフルレンによる吸入麻酔を行うといった具合です。<br />
>↑<br />
>エーテル麻酔なのですが、現在はあまり日本でも、その発火性の危険からあまり使用されなくなってしまいました。ただエーテル麻酔は、イソフルレンやセボフルレンよりも、心悸抑制作用が低いので、生理的には最も安全な麻酔薬とされています。<br />
><br />
><br />
>>一方で実験を行うために内務省(Home Office)による審査やライセンス取得など多くの手続きを経なければならず<br />
>↑<br />
>これこれ、先日動物倫理の講義で教わりましたよ。<br />
>英国は非常に動物実験関係者にとってはやりにくい国のように思えてなりません。<br />
>しかしながら、今傾向はグローバル的に広まっているため、ある意味先手を取ってその対策を学べると考えるようにしています。<br />
><br />
>ただ、こうした過激派の方々は、本当に動物実験のことをわかってやっているのか?理解しがたいですね。<br />
><br />
>トラックバックいただきます。<br />
-----<br />
イソフルレンよりエーテルの方が生理的に安全なのですねー。<br />
知らなかったです。<br />
獣医さんは使わないかもしれないけど、日本でマウスやラットなどの動物実験では今でもエーテルが主流ではないでしょうかね?<br />
<br />
あと、イギリスは動物実験にはとても厳しいのに、ES細胞や幹細胞研究にはわりと寛容なのも不思議です。<br />
あとでこちらからもトラックバックさせていただきますね。<br />
Posted by fumi fumi @ office at 2005年02月01日 03:02
TITLE: Re[1]:イギリスの動物実験事情(01/24)
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パンダ7さんこんばんは!<br />
<br />
>(@´〜`@)ー3 フゥ〜 確かに動物実験…しなくていいならして欲しくは無いけれど…<br />
><br />
>私の次女 仙台のT北大工学部化学バイオ工学にいるんですが、工学は動物実験なんてありませんよね。<br />
><br />
>化学バイオとなるとなんか関係ありそうで…気になります。<br />
-----<br />
動物実験は、培養細胞やコンピュータシミュレーションによる代替が行われていますが、現段階では非常に限定的です。<br />
医学研究のためには不可欠な「必要悪」のようなもので、当分は続いていくでしょうね。<br />
<br />
ちなみに工学部でも研究室によっては動物実験めっちゃあると思いますけど・・・。<br />
Posted by fumi fumi @ office at 2005年02月01日 03:17
TITLE: Re:動物実験かぁー・・・(01/24)
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ぐうたらワイフさんこんばんは!<br />
<br />
>反対する人達って薬を飲まないのかしら?<br />
>私は体が弱いもんで、お薬にお世話になっている身からすると、実験は仕方がないのかなぁと思います。<br />
><br />
>ずっと前ね、セントラルロンドンで動物愛護のデモがあったのね。たまたま出くわしてしまった・・・。でもその中にはかばんとか、靴とか、ジャケットとか・・・どう見ても皮製なのよね。それはいいんかい?!って思いました。<br />
><br />
>PS.ところでFumifumiさん、Anatomyのあの番組見ましたー?私にはかなり強烈でした・・・。ではでは。<br />
-----<br />
その番組、偶然ちょこっと見てしまって小心者なのですぐ消しましたよ☆<br />
ぐうたらさんは見たのですね?<br />
Posted by fumi fumi @ office at 2005年02月01日 03:21
TITLE: Re[1]:イギリスの動物実験事情(01/24)
SECRET: 0
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あきゃん1376さんお久しぶりです☆<br />
<br />
>fumifumiさん、お久しぶりです!お帰りなさいませ。<br />
><br />
>私も動物は大好きだけど、「過激な」動物愛護活動家は大嫌い。<br />
>fumifumiさんの日記中のポスターに同感です。<br />
>我が子が病気になって新薬が必要でも、同じように活動続けて、我が子は見捨てて全く関係のない猫や猿の方を本当に助けられるのであれば、ちょっと骨のある奴だと思ってはやるけど、ほんとにそうしたらただの気違いだとも思うなあ。<br />
>以前、動物実験施設の爆破事件とかありましたよね。警備員さんか誰か、結果的に殺してましたよね。<br />
>家族のある警備員という人間より、動物の命の方が大切なんでしょうね、あの人達にとっては。<br />
>こっちって、妙に偏った考えの組織とか、結構多くありません?<br />
-----<br />
僕もこの前びっくりしたのが、オフィスにKさんに電話がかかってきたので、<br />
「Kさんは今、動物管理室にいってて席をはずしてます。」<br />
といったら、あとから上司に注意されました。<br />
それだけでも外部の人に漏らしてはいけないそうです。<br />
こちらでは動物関連のトピックは本当に気を使います。<br />
<br />
活動家と言えば父親の権利の団体も派手に騒ぎを起こしてるし、この国は活動家が多いですね。<br />
Posted by fumi fumi @ office at 2005年02月01日 03:25
TITLE: Re[1]:アニマルテロリスト(01/24)
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fumi fumi @ officeさん<br />
<br />
<br />
>イソフルレンよりエーテルの方が生理的に安全なのですねー。<br />
>知らなかったです。<br />
>獣医さんは使わないかもしれないけど、日本でマウスやラットなどの動物実験では今でもエーテルが主流ではないでしょうかね?<br />
↑<br />
そうなんですか?<br />
動物実験でも周辺機器が多くなり、例えばレーザーや電気メスの類を使用する場合、エーテルは使えなくなってしまうんです。<br />
あっでもやっぱりたいていのマウスやラットを使用した実験動物はエーテル主流ですかね?<br />
<br />
僕は麻酔が専門だったので吸入麻酔にもある程度知識があるのですが、引火性という大きな欠点さえなければエーテル麻酔が最も理想的な麻酔だと思います。ただ、この引火性というのは非常に大きな欠点なんですけどね。<br />
人医の方では、まず手術で電気メスの類は使用されることでしょうからエーテルは不適ですが、動物実験ならば、ある意味エーテルは生理的に最も身体への副作用が少ないと言うのを逆手にとって使用が可能だと思うのですが・・・。<br />
<br />
<br />
>あと、イギリスは動物実験にはとても厳しいのに、ES細胞や幹細胞研究にはわりと寛容なのも不思議です。<br />
↑<br />
先日『動物倫理』の講義を聞いていてひとつ思ったのですが、英国民のアニマルテロリストはかなり感情論で物事を進めるそうです。同じ英国民からも敬遠されているようです。<br />
<br />
ぼくもfumi fumiさんと同じく、このアニマルテロリストが英国の科学を衰退させないことを祈っています。<br />
Posted by kalunguyeye at 2005年02月01日 05:43
TITLE: Re[2]:アニマルテロリスト(01/24)
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kalunguyeyeさんこんばんは。<br />
-----<br />
<br />
ぼくの周りではエーテル麻酔がほとんどだったけど、自分の経験だけではなんとも言えないですよね。<br />
分野が違うと方法も違うことも多いし。<br />
<br />
あと気になったのは、動物実験反対論者には「人間と動物は違う」という考え方の人が多いのがとてもキリスト教的だと思うのです。<br />
反対論者は動物実験と人間で結果が異なる例をことさらに大きく取りあげることが多いですよね。<br />
せっかくダーウィンと進化論をフィーチャーした立派な自然史博物館があるのに、もったいない話です。<br />
Posted by fumi fumi at 2005年02月01日 09:13
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