3日坊主になるのかと思いきや、ここまで続けてこられたのは、ひとえに他ならぬ読者の方々のおかげ。心から感謝申し上げたいと思います。
さて、今回は100回記念ということで、いつもよりちょっとまじめなテーマ。
ロンドンには日本人が実に5万人も暮らしていて、日本人同士の交流会というのがいろいろとあります。
筆者の業界でも、数ヶ月に一度、日本人のちょっとした同業者の集まりがあるので、時々顔を出しています。
と言っても、これまであまり熱心に参加していたわけではなかったのですが、今回は会場の日本食レストランGがとても気に入っているお店だったし、しばらくこの会にも行っていなかったので、およそ半年振りに顔を出しました。
そんなわけで、あまり大きな期待もせずに行ったのですが、なんと今回は思わぬ大物の方がいらっしゃったので、ちょっと興奮してしまいました。
その方とは、日本人でありながらここイギリスでバイオ系のラボを持ち、泣く子も黙るNatureなどの国際一流誌に数々の論文を発表されている、この世界では超有名人のT教授です(これだけでほとんど特定されてしまう気もするが・・・)。
T教授、実際話してみると、とっても気さくで、ちょっとひょうきんな素敵な方でした。
幸運にも結構長い時間、あれこれお話させていただいたのですが、僕が一番聞きたかったのは、なぜあえてイギリスでラボを持とうと思ったのか、という点です。
T教授のお話では、まず第一に「これをやれ」とか「あれをやれ」なんてことを周りから言われず、比較的自由に研究ができる、という点があるそうです。
またもう一つ、僕も強く同意してしまったのは、研究の進め方の違い。
日本だと、テーマを一つに絞らずに、いろいろなことをやっているのが良い、とされる傾向があります。
たとえば筆者が日本のグラント(補助金)に応募するときでも、「こんなことも、あんなこともやってますよ〜♪」というふうに大風呂敷をひろげて書くように、とよく言われたものです。
しかし、イギリスでは逆に、「もっと一つのテーマに集中するように」と言われることが多いんだそうです。
そう言われてみると、僕のラボの人たちをみても、あまりあれこれと手を広げず、自分のテーマを完成させることに集中している人が多いです。
日本だと、ライバルグループの論文が出るたびに、気になってそっちの実験を試したり・・・なんてことをする人が多いのに比べると実に対照的。
数々の博物館などを見ていても感じるのですが、イギリス人って一度熱中するとトコトン自分の研究を極める、という研究者向きの気質があるのかもしれません。
ちなみに科学技術庁による97年の調査によると、科学論文の重要度を示す「被引用度」において、イギリスはアメリカについで2位。4位の日本よりもいまだにだいぶ上なのです。
あと、もう一つT教授が付け加えていたのは、日本よりも日々の生活を楽しめる点です。
もちろん、これはイギリス在住の日本人なら誰もが感じることだと思いますが・・・。
しかし、それでも大きな成果を次々と発表し続けているT教授はスゴイ!と思いました。